2010年5月20日木曜日

知識創造企業

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今年の18冊目。

日本人の経営学の分野で最も世界への影響力が大きい理論。それがこの本で書かれている知識創造という考え方。だそうです。

僕の働いているのグループの社長は「暗黙知の形式知化」という事が大好きで、年初、期初、創業記念・・・などなど事あるごとに話に出てきます。かといってそうする為に何をするわけではないような印象なのですが。

そういった背景もあり興味深く読んだのですが、さすがに面白かった。やはり良い理論というのは僕みたいな基礎知識が少ない人間が読んでも直感的に理解できるというか、わかりやすい物ですね。

ただ、知識というものが何かをプラトン、デカルトなど古代ギリシャの哲学までさかのぼってレビューする第2章はチンプンカンプン。

第一章にプラトンやデカルトはどうも苦手な実務者は第三章からどうぞという暖かい言葉が書かれていた為、お言葉に甘えて読み飛ばしました。

ただ長い時間のテストを潜り抜けて、最も真理に近いと考えられる哲学。そういうことが少しは理解できる人間になりたいですね。思っているだけですが。

■暗黙知と形式知

・暗黙知:主観的な知(個人知)、経験知(身体)、同時的な知(今ここにある知)、アナログ的な知(実務)
・形式知:客観的な知(組織知)、理性知(精神)、順序的な知(過去の知)、デジタル的な知(理論)
・暗黙知と形式知。2種類の知識脳相互作用が知識変換
・暗黙知と形式知の相互作用は個人で行われ、組織によって行われるものではない。個人抜きにして組織は知識を作り出すことはできない。
・他者と共有、グループや組織レベルで増幅されなければ知識は組織的かつスパイラルに高度化することはない。

■SECI:知識変換のプロセス

・知識変換は4つのモードにより起こる(SECI)
‐共同化(Socialization):個人の暗黙知からグループの暗黙知を創造する
‐表出化(Externalization):暗黙知から形式知を創造する
‐連結化(Combination):個別の形式知から体系的な形式知を創造する
‐内面化(Internalization):形式知から暗黙知を創造する

・共同化モード:チームを作り、そこでメンバーが体験とメンタルモデルを共有する
・表出化モード:意味のある対話を重ねる。隠れた暗黙知を表に出すためにメタファーやアナロジーを使う
・連結化モード:創られたコンセプトを既存のデータやチーム外部の知識と結びつけており共有しやすい仕様に仕上げる
・内面化モード:チームメンバーが組織全体に共有される新しい形式知を体得した時に各自の暗黙知を拡大し再構成するために知識を使い起こる。

■組織的知識創造促進の条件

・組織的知識創造プロセスはグループレベルでおこる
・組織はグループ活動、個人的レベルでの知識の創造・蓄積を促進する環境や仕組みを提供する。

・知識スパイラルを推進する為の5つの条件
1.意図:目標への思い。それを実現しようとする努力。コミットメントは人間の知識創造活動の基礎
2.自律性:できるかぎり個人のレベルで自由な行動を認めるようにする。
3.ゆらぎ/創造的カオス:組織と外部環境の相互作用を刺激する。危機感。
4.冗長性:意図的な情報冗長性。組織メンバーが当面必要の無い仕事上の情報を重複共有している状態
5.最小有効多様性:複雑多様な環境からの挑戦に対応するには、組織は同じ程度の多様性をその内部にもっていないといけない。

■知識創造のファイブ・フェイズモデル

・組織的知識創造は非線形的な相互作用プロセス
・ファイブフェイズモデルを回転しながら組織のレベルを超えて動く。スパイラルアップ。

・知識創造のファイブ・フェイズモデル(例は松下のパン焼き機)
1.暗黙知の共有:パン作り名人のところで修行
2.コンセプトの創造:シェフのこね方から「ひねり伸ばし」というコンセプト創造
3.コンセプトの正当化:「イージーリッチ」という当初の目標に対して正当化
4.原型の構築:「うね」をつけたプロとタイプ
5.知識の移転:コスト削減という次のサイクルへ

■知識創造のためのマネジメントプロセス

・知識創造を促進する為のマネジメントの課題
‐トップダウンモデルは共同化と表出化を実行する能力に課題がある
‐ボトムアップモデルは連結化と内面化が機能しない
⇒ミドル・アップダウン・マネジメントモデルが適している

・ナレッジクリエイティングクルーを導入する
‐ナレッジプラクティショナー:第一線の社員とミドルマネージャー。ビジネスの第一線で知識を体得する。
‐ナレッジエンジニア:ミドルマネージャー。トップの理想と現場の現実をつなぐ。会社のビジョンにしたがって新しい知識を工夫して作り出す
‐ナレッジオフィサー:トップマネージャー。組織的知識創造をマネージする

■知識創造のための組織構造

・形式的な階層組織(ヒエラルキー)と柔軟な任務組織(タスクフォース)どちらも知識創造には適さない。
⇒ハイパーテキスト型組織が適している

・ハイパーテキスト型組織
‐プロジェクトチームレイヤー:ビジネスシステムレイヤーの様々な部署からプロジェクトチームとして選ばれ知識創造に従事する
‐ビジネスシステムレイヤー:
‐知識ベースレイヤー:プロジェクトで生まれた知識を文書化、分析する

・全く異なる3つのレイヤーが同じ組織の中に共有している
・知識創造は知識が3つのレイヤーを、めぐるダイナミックなサイクル

例)シャープのプロジェクト制度

■グローバルな知識創造

・西洋的/日本的方法による知識創造
‐西洋的方法:形式知を重視。個人レベルで起こり少数の個人が決定的な役割を果たす
‐日本的方法:暗黙知を重視。グループレベルで起こり、比喩的言語とシンボルの多用を強調しすぎて分析的方法や文書化をないがしろにする。
⇒長所を統合する必要がある。

・グローバルでの組織的知識創造の要件
1.プロジェクトに参加している組織のトップがプロジェクトに強くコミットメントしていること
2.有能なミドルマネージャーを「グローバルナレッジエンジニア」としてプロジェクトに配属する
3.プロジェクト参加者が十分なレベルの相互信頼を築く

■実務者が企業内で組織的知識創造を行うためのガイドライン

1.知識ビジョンを創れ:どのような知識を追求するかを画定する
2.ナレッジクルーを編成せよ:
3.企業最前線に濃密な相互作用の場を作れ:高密度の場。例)合宿など
4.新製品開発のプロセスに相乗りせよ:新製品開発プロセスは新しい組織的知識を作り出すプロセスの中核
5.ミドル・アップダウン・マネジメントを採用せよ:ミドルマネージャーが鍵となる
6.ハイパーテキスト型組織に転換せよ
7.外部世界との知識ネットワークを構築せよ

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