2010年5月10日月曜日

木のいのち木のこころ

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今年の15冊目。

「法隆寺最後の棟梁」西岡常一と唯一の弟子小川三夫。そして小川が作った鵤工舎の若者たちへのインタビューをまとめた本。

久々に純粋なビジネス書ではない本を読みました。「もしドラ」は純粋なビジネス書かどうかは微妙ですが。

本当に面白かった。普通のビジネス書以上に為になる事一杯ありました。今年読んだ中では一番良かったんじゃないかなぁ。

木も山のどこでそだったかにより個性が違う、その個性が最も生きる場所に、個性の組み合わせが最高になるように建物をつくらないといけない。

これって組織と完全に同じですよね。メンバーの個性を活かしながら組織のパフォーマンスを最大に活かす事がリーダーの仕事。

奈良出身でありながら、法隆寺も薬師寺も言った事無く、西岡棟梁達の仕事を見た事が無いって本当に恥ずかしいなぁって思いました。近いうちに是非行ってみたいと思います。

グローバル化が進む時代だからこそ、日本の良さ、日本人のアイデンティティを大事にしなければいけないですね。

■法隆寺大工の口伝

・神仏をあがめづして社頭伽藍を口にすべからず 

神の道を知らんものは、神社建築を口にするな、また仏の道を知らぬものは、堂塔伽藍を口にするな。
自分が造ろうとしているもの、かかわっている仕事がどんなものかを知らなければだめだ。
これは、宮大工としての心構え。

・堂塔建立の用材は木を買わず山を買え

木の質は土の質によって決まるし、木の癖は「木の心」と言っても良いかも知れないが、やはり山の環境によって生まれる。
木は伐採されて製材されたものを買うのではなく、自分で山に行って地質を見、環境による地質の癖を見抜いてから買いなさい。

・木は生長の方位のまま使え、東西南北はその方位のままに、
  
その山の南に生えていた木は、塔を建てる時に南側に使え。北の木は北、東の木は東、西の木は西に、育った木の方位のまま使え。

・堂塔の木組みは、寸法で組まず木の癖で組め

建物を組み上げるのに寸法は欠かせないが、それ以上に木の癖を組む事が大切である。
木の癖を組むとは、左に捻れを戻そうとする木と、右に捻れを戻そうとする木を組み合わせて部材どうしの力で癖を封じて、建物全体のゆがみを防ぐことを言う。

・木の癖組は工人たちの心組み

建築は一人では出来ない。大勢の人間の力を結集して出来上がる。力を結集するというのは心を一つにするということ。大勢の職人の心を棟梁の心構えと同じように仕事に立ち向かう心構えにしなければなりません。職人も木と同じように癖があり、一筋縄では行きません。

・工人たちの心組みは匠長が工人らへの思いやり

大勢の職人の心を汲んで一つにするためには棟梁に思いやりがなければならない。

・百工あらば百念あり、一つに統ぶるは、匠長の器量なり、これを正と云う

百人の工人がいればそれぞれ考えが違う。この百人の心を一つにまとめるのが、
棟梁の能力であって、みんなの心がまとまって、始めてその方向が正しい。

・百輪一つに止める器量なき者は謹み惧れて匠長の座を去れ

工人の意見を一つにまとめられない者は、自ら棟梁を止めなさい。
棟梁は、仕事が出来るだけではだめで、建物を完成させる責任は重く、工人に思いやりを持って接し、かつ心をまとめなければならない。

・諸諸の技法は、一日にして成らず。祖神たちの神徳の恵なり、祖神忘れるべからづ

口伝を守ってそれを実践すれば堂塔は出来るが、これは自分だけの功ではない。
先人たちが実験を重ね、失敗を正し、こうして伝えてきた技法による。
自分の知恵や力だけで出来るものではない。神に感謝し、以降も口伝、技法を伝えなければならない。

超おすすめです。

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