2009年12月5日土曜日

生きるとは自分の物語をつくること

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今年の71冊目。

いくら自然科学が発達して、人間の死について論理的な説明ができるようになったとしても、私の死、私の親しい人の死、については何の解決にもならない。「なぜ死んだのか」と問われ「出血多量です」と答えたも無意味なのである。

その恐怖や悲しみを受け入れるために、物語が必要になってくる。

死に続く生、無の中の有を思い描くこと、つまり物語ることによってようやく、死の存在と折り合いをつけられる。物語を持つことによって初めて人間は、身体と精神、外界と内界、意識と無意識を結びつけ、自分を一つに統合できる。人間は表層の悩みによって、深層世界に落ち込んでいる悩みを感じないように生きている。表層的な部分は理性によって強化できるが、内面の深い所にある混沌は論理的な言葉で表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つの全体とし、更に他人ともつながってゆく、そのために必要なのが物語である。物語に託せば、言葉にできない混沌を言葉にする、という不条理が可能になる。

生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語をつくりあげてゆくことに他ならない。

2 件のコメント:

mumuyau さんのコメント...

私もこれ読みました。いいですよねぇ、小川洋子さん、大好きです。
ものすごい悩んでいた時期だったので「自分の物語を作る」って言葉が当時の私にはぴったりしっくりきて、ずいぶんと救われたのをよく覚えてます。
それにしても河合隼雄さんが亡くなってしまったのは残念です。一度お逢いしたかった・・・。

つじ さんのコメント...

実は小川洋子さんも河合隼雄さんも全然知らなかったんですが、行きついてしまいました。

MBAに行って、いろんな事を学んで、いろんな人と出会って、関心の範囲が広がっている気がします。

「自分の物語を作る」本当に良い言葉ですね。